Ren Protocolのクロスチェーン基盤が支援企業の破綻で揺らいだ理由

ブロックチェーン間の資産移転を支えたRenだが、Alameda Researchの破産を受けRen 1.0の終了計画を前倒しした。技術の分散化だけでは事業の継続性を保証できない。

Ren Multi-Chain Network Hub

2022年11月、Ren Protocolの開発チームは、分散型インフラを目指す事業としては皮肉な発表を行った。開発資金は同年第4四半期末までしか確保できず、主要支援企業Alameda ResearchがFTXグループとともに破産手続きに入ったことから、Ren 1.0の終了を急ぐというものだった。

取引処理を複数のノードに分散していても、人材の雇用、運営調整、重要なサービスを一社に依存することはある。その企業が行き詰まれば、暗号技術が破られていなくてもネットワークの継続性は損なわれかねない。

この事例はブロックチェーン技術の失敗を証明せず、Renの取り組み全体が消滅したことを意味するわけでもない。 問われるのは、分散型を掲げる仕組みに誰が停止を迫り得るのか、という点だ。

Renは異なるブロックチェーンをどうつないだか

ビットコインは、そのままではイーサリアム上のアプリで利用できない。2020年5月にメインネットを公開したRenVMは、クロスチェーンブリッジを通じてこの壁を越えようとした。

一つの方式では、元のBTCをRenVMの管理機構にロックし、イーサリアム上に同量のrenBTCを発行する。利用者はそれを分散型金融(DeFi)で使える。一方、元のBTCを引き出すにはrenBTCをバーン(焼却)し、ブリッジによるBTCの解放を受ける必要がある。ウォレットにトークンが表示されていても、償還が可能とは限らない。

RenはDarknodesと安全なマルチパーティ計算(sMPC)を活用し、単独の参加者が資産管理の秘密情報を丸ごと保有しない設計を目指した。ただし、鍵の管理が分散していることと、資金・運営権限まで分散していることは別問題だ。

「分散型」という言葉の射程

Renは分散化を段階的な取り組みと説明していた。2020年8月の技術解説によると、初期段階は「sub-zero」と呼ばれ、中核ノード群Greycoreは当初Renチームが運営し、外部参加を徐々に増やす構想だった。

区別すべきなのは、鍵と取引処理の分散化と、意思決定およびサービス継続の独立性である。後者には開発費、従業員、ドメイン、利用者向け情報、ソフトウエアを更新する権限などが含まれる。

2021年初め、RenはチームがAlameda Researchに加わり、RenVMの開発を進めると発表した。2022年11月にはこの関係を買収と説明し、Alamedaが四半期ごとに開発資金を提供していたと明らかにした。

大口支援者の存在自体が悪いわけではない。問題は、その支援者が機能しなくなった際に重要な資金と権限を速やかに移せるかどうかだ。

Alamedaの破綻がRenに波及した経緯

2022年11月11日、FTXとAlameda Researchを含む関連会社は米連邦破産法第11章の手続きを申請した。会社の破産はRenVMへのハッキングを示すものではなく、関連する全製品の技術的破綻を証明するものでもない。

AI生成によるAlameda Researchオフィスのイメージ。実際の記録写真ではない

その7日後、Renチームは「Moving on from Alameda」を公表した。開発資金が2022年末までで尽きること、Ren 1.0が引き続きAlamedaの指揮下にあることを説明し、旧ネットワークを早期に終了して、よりオープンでコミュニティ主導のRen 2.0へ移る方針を示した。

計画では、新たな資産のミント(発行)を止める一方、元の資産を取り戻すためのバーンは当面維持し、約30日間の移行後にRen 1.0を終了するとされた。30日という期間は当時の予定であり、全機能が同じ日に停止した証拠ではない。

2022年12月19日、The Blockはイーサリアム上に約1,500万米ドル相当のrenBTCが残り、償還不能となる恐れがあると報じた。これは当時のリスク額の推計で、確定した損失額ではない。

重要なポイント ウォレットにトークンが表示されていても、ブリッジが機能しなければ元の資産を引き出せない。市場価格だけでなく、償還経路の存続が重要だ。

分けて確認すべき三つの依存関係

ノードの運営者数だけでは耐久性を測れない。技術、運用、資金とガバナンスを別々に調べる必要がある。

確認項目確認すべき点支援者喪失時のリスク
技術検証、鍵、更新権限は誰が持つか処理や償還の停滞
運用必要なサービスと利用者への案内は誰が担うか移行が間に合わない恐れ
資金・ガバナンス開発費は誰が負担し、代替資金はあるか開発や移行の中断

Renによると、当時renproject.ioのドメインはAlamedaが保有していた。ウェブサイトを分散型ストレージのIPFSへ移し、管理権をRenDAOに渡す案も示された。ドメインはBTCを保管しないが、利用者との連絡やサービスへのアクセスには影響する。

全DarknodesがAlamedaの所有だった、あるいは一人がすべての鍵を持っていたと断定する根拠はない。確認できるのは、技術の分散化に比べ、組織上のリスク分散が進んでいなかったということだ。

Ren 2.0の構想は稼働の証明ではない

Ren 2.0の構想は2022年8月には存在しており、オープンソース化、運営参加者の拡大、新しいマルチパーティ計算技術などを掲げていた。破産によって、その移行が急がれることになった。

2023年9月、Ren Foundationは同年4月13日に非営利団体として設立され、コミュニティ主体の次世代Renの研究開発を支援すると発表した。これは継続への動きを示すが、Ren 2.0のメインネットが完全に稼働した証明ではない。

2026年10月9日の確認時点で、renprotocol.orgには「A new Ren」とだけ表示されていた。このページだけでは現行サービスや償還の可否を判断できない。取引前には最新のコントラクト、稼働状況、信頼できる公式発表の確認が欠かせない。

利用者と分散型プロジェクトへの教訓

暗号資産サービスの評価を「分散型」という宣伝文句で終えてはならない。運営企業がなくなり、資金や人員が途絶えたときに、誰が保守し、利用者が資産を引き出せるのかを確かめるべきだ。

独立した運営者、公開された更新権限、持続可能な保守費用、移行手順、緊急時の償還手段などが判断材料となる。

Ren 1.0が示したのは、立証されたハッキングではなく、ブリッジを支える企業への依存という問題だ。 暗号鍵の管理が分散していても、資金、人材、意思決定が一極に集中していれば、システムの継続性は脆くなる。

参考資料

一次情報源

  1. RenVM | The Road to Decentralisation
    Ren Protocol / Loong2020年8月28日
  2. Ren + Alameda
    Ren Protocol / Taiyang Zhang2021年2月2日
  3. FTX Files Chapter 11 Bankruptcy
    Louisiana Office of Financial Institutions2022年11月11日
  4. Moving on from Alameda
    Ren Protocol / Ren Community2022年11月18日
  5. Introducing the Ren Foundation
    Ren Protocol / David Perkins2023年9月25日
  6. RenVM Mainnet Release
    Ren Protocol / Taiyang Zhang2020年5月27日
  7. Introducing Ren 2.0
    Ren Protocol / Ren Community2022年8月10日
  8. Ren Protocol – A new Ren
    Ren Foundation / official website

ニュース / 報道ソース

  1. Ren Protocol’s imminent shutdown likely, $15 million still at risk
    The Block / Tim Copeland2022年12月19日
トピック: デジタル資産テクノロジー金融安定