世界のサッカー大会から生まれる資金は、スタジアムの入場料にとどまらない。放映権、広告、スポンサー、チケットの収入はまず権利を保有する統括団体に入り、その後、加盟協会やクラブ、主催者、取引先へと分配される。収入額の大小以上に難しいのが、どの国が実際に税金を受け取ったかという問いだ。
世界全体を統括するFIFAの下に、UEFA、AFC、CONMEBOL、CONCACAF、CAF、OFCの6大陸連盟がある。7団体は別々の組織で、会計期間も統一されていない。非営利法人や現地法による免税の扱いも異なり、放映権収入が巨額でも同じ規模の法人税が発生するとは限らない。
本稿は2026年10月15日までに確認できる年次報告書、監査済み決算書、税務資料を基に各団体の3期を検証した。税金が区分開示されていない場合は推計で補わない。FIFAから大陸連盟への拠出金は受領側の収入にも計上されるため、両者の売上を単純に合算しない。
世界のサッカー統括団体の収入源
収入源は大きく三つ。まず放映権と商業権、スポンサーや大会ブランドの使用料。次にチケット、ホスピタリティ、開催関連の収入。そしてFIFAなど上部組織からの補助金、利息、会費などだ。小規模連盟では最後の比重が特に大きい。
収益は純利益ではないし、本部所在国に全額が残るわけでもない。FIFAの補助金が受領側の収益として再計上される点を踏まえ、各団体の会計を分けて読む必要がある。
FIFAの収益はワールドカップ周期で変動
スイスに本部を置くFIFAの収益計上は、権利契約と大会日程に左右される。男子ワールドカップは4年周期で、年ごとの収益が大きく変動する。男子大会がなかった2024年を、大規模大会がある年とそのまま比較するのは適切ではない。
税金・公租公課については発生主義の費用と実際の現金支払を区別する。下表は費用を先に、現金支払額を後に示す。
| 暦年 | 収益とその他収入の合計 | 税金・公租公課費用 / 現金支払額 |
|---|---|---|
| 2023 | 1,169.649 million USD | 費用 0.495 million USD / 現金支払 16.464 million USD |
| 2024 | 482.666 million USD | 費用 0.903 million USD / 現金支払 6.061 million USD |
| 2025 | 2,661.404 million USD | 費用 6.443 million USD / 現金支払 3.769 million USD |
会計上の税金費用と現金支払額は別の数字である。2023年に現金支払が費用を上回ったのは支払時期と費用認識のずれによる。スイスと開催国への納付内訳は分からない。2025年のFIFAの媒体権収益は1,044.451 million USD、マーケティング権は964.975 million USD、チケットとホスピタリティは410.496 million USD。総収入をそのまま法人税の課税利益とみなすことはできない。
UEFAを支えるクラブ大会と代表戦
UEFAもスイスに本部を持つ。チャンピオンズリーグなどのクラブ大会から継続的な収入を得る一方、欧州選手権(EURO)の開催年には代表戦の収益が上乗せされる。
| 会計年度 | 収益合計 | 個別に確認できる納税額 |
|---|---|---|
| 2022 – 2023 | 4,320.8 million EUR (4,672.1 million USD) | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
| 2023 – 2024 | 6,776.6 million EUR (7,335.0 million USD) | 財務項目と税金を合算して表示 |
| 2024 – 2025 | 5,014.2 million EUR (5,666.0 million USD) | 財務項目と税金を合算して表示 |
2024/25年度のUEFAは放映権で4,064.8 million EUR (4,593.2 million USD)、商業権で786.9 million EUR (889.2 million USD)を計上し、出場クラブに3,860.7 million EUR (4,362.6 million USD)を分配した。財務項目と税金が一括表示されているため、納税額だけを取り出せない。
AFCの収入は放映権とスポンサー、助成金
マレーシアに本部を置くAFCは代表戦やクラブ大会の放映権、スポンサー収入に加え、FIFA Forwardによる支援金を受け取る。
| 暦年 | 公表された総収入 | 税金の開示 |
|---|---|---|
| 2023 | approximately 266.0 million USD | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
| 2024 | 312.356 million USD | 税額欄はダッシュ表示 |
| 2025 | 292.723 million USD | 税額欄はダッシュ表示 |
AFCの2025年報告書は、マレーシア法上の所得税免除に言及している。2024年と2025年の税額欄がダッシュでも、国外開催の大会で生じるVATや源泉税がない証拠にはならない。
コパ・アメリカがCONMEBOLの収益を押し上げる
パラグアイを拠点とするCONMEBOLは、コパ・リベルタドーレス、コパ・スダメリカーナ、コパ・アメリカを主な事業とする。米国開催のコパ・アメリカがあった2024年は収益が大幅に増加した。
| 暦年 | 公表された収益 | 確認済みの納税額 |
|---|---|---|
| 2023 | approximately 520 million USD | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
| 2024 | approximately 869 million USD | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
| 2025 | approximately 560 million USD | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
CONMEBOLの本部がパラグアイにあっても、米国開催のコパ・アメリカに関する税金がすべてパラグアイに入るわけではない。現地のチケット販売や雇用、商取引には開催国法が適用され得る。
米国の税務申告から分かるCONCACAFの収入
CONCACAFは米国に拠点を置き、税法501(c)(6)に基づく免税団体として公開書類Form 990を提出している。収益は確認できるが、同書類だけですべての納付税額を特定することはできない。
| 申告年度 | Form 990上の収入 | 区分できる法人所得税 |
|---|---|---|
| 2022 | 62.193 million USD | Form 990から税額を特定できない |
| 2023 | 254.273 million USD | Form 990から税額を特定できない |
| 2024 | 135.099 million USD | Form 990から税額を特定できない |
法人所得税の免除は、給与関連税や免除対象外の事業活動に課される税金まで一律に免除するものではない。
CAFは監査済み2期と暫定値1期を公表
エジプトのカイロに本部を置くCAFは、アフリカ・ネーションズカップ(AFCON)の権利収入とFIFAの支援を主な財源とする。直近1期の数値は監査前の暫定値だ。
| 6月期決算 | 総収入 | 確認済みの納税額 |
|---|---|---|
| 2022 – 2023 | 109.024 million USD | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
| 2023 – 2024 | 166.421 million USD | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
| 2024 – 2025 | 約88.8 million USD(未監査) | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
アフリカ各国で開催される大会の税収は、エジプトだけでなくそれぞれの開催国にも生じ得る。
OFCはFIFAの資金支援に大きく依存
ニュージーランドで登記されているOFCは、大規模な大陸連盟と比べてFIFAの助成金への依存度が高い。2024年と2025年の決算値は確認できたが、2023年の収益額は確証を得られなかった。
| 暦年 | 収益合計 | 税金の開示 |
|---|---|---|
| 2023 | 2023年の数値は未確認 | 税金の現金支払額を個別に確認できない |
| 2024 | 33.657 million NZD (20.36 million USD) | 税額欄はダッシュ表示 |
| 2025 | 37.707 million NZD (21.95 million USD) | 税額欄はダッシュ表示 |
ニュージーランド法にはアマチュアスポーツを振興する一定の団体への所得税免除がある。それでもOFCは、2024年にGST純額54,440 NZD (32,936 USD)、2025年に78,891 NZD (45,930 USD)の現金支払を計上した。GSTは法人所得税ではない。
サッカー事業の税収はどの国に帰属するか
税金を受け取る国は本部所在地だけでは決まらず、課税対象となる活動がどこで行われたかによる。
- 本部所在国であるスイス、マレーシア、パラグアイ、米国、エジプト、ニュージーランドなどは、国内法に従って法人や協会に課税する。
- 大会開催国では、課税対象となるチケットや宿泊・サービスにVATやGSTがかかり、雇用関連税や源泉税が生じる場合もある。
- スポンサーや放映権購入者の所在地では、費用控除や国際取引に伴う源泉徴収が問題になる。ただし費用控除自体は税収ではない。
- 加盟協会やクラブの所在地では、分配金による雇用や商取引に課税される場合がある。
各国が実際に徴収した総額を出すには、国別・税目別の資料が必要だ。7団体の公開資料だけでは十分ではない。
3年間の数字を比べる際の落とし穴
FIFAとAFCは暦年、UEFAとCAFは競技シーズンに関連した会計年度、CONCACAFは税務申告年度で比較している。収益の定義や補助金の比率も異なるため、単純な順位付けは誤解を招く。
換算には実際の取引レートではなく暦年平均を用いた。EUR/USDは2023年1.0813、2024年1.0824、2025年1.1300。NZD/USDは2024年0.6050、2025年0.5822である。
重要な視点 サッカーの放映権収入は国境を越えるが、すべての資金に一律の税率がかかるわけではない。本部所在国、大会開催国、受領者の国では課税対象が異なる。中央団体の法人税額がゼロまたは不明でも、サッカー全体で税収が生じていないとは言えない。
まとめ FIFAと6大陸連盟は、収入構成、会計期間、税務上の優遇が異なる。法人所得税、間接税、開催国に生じる税を分け、基準の違う数字や未確認の税額を混ぜないことが重要だ。



